触れ合いがなくなって寂しい。求めても断られるのが怖い。応じることを期待されるのが苦しい。同じ「セックスレスがつらい」という言葉でも、抱えている気持ちは人によって違います。
回数や期間だけで、夫婦の状態を正常・異常に分けることはできません。性欲の強さ、触れ合いへの希望、体調、生活状況も人によって異なります。原因を一つに決めたり、どちらかだけを悪者にしたりせず、まず自分の気持ちと境界を分けてみます。
今夜すぐに話し合う必要はありません。気持ちが強いときは、話す準備だけして休むことも選択肢です。
「つらい」の中身を分ける
つらさは、性行為の有無だけから生まれているとは限りません。
- 拒まれたことで、自分を否定されたように感じる
- 誘う側ばかりになり、寂しい
- 応じなければ関係が悪くなるようで不安
- 性行為より、手をつなぐ、抱きしめるなどの触れ合いがほしい
- 気持ちや体調を聞かれないことが苦しい
- 他の場面でも会話や労いが減っている
- 将来もこのままなのか分からず不安
「セックスがないからつらい」と大きく捉えるだけでなく、どの場面で、何を感じたかを書きます。事実、そこから考えたこと、感情を分けると、自分が伝えたいことが見えやすくなります。
例えば「先週、触れようとしたとき話題を変えられた」が事実、「もう魅力がないのかもしれない」が解釈、「寂しい、怖い」が感情です。解釈を確定させず、相手へ確認できる部分を残します。
自分が望むことを具体的にする
「前のように戻りたい」という願いの中にも、いくつかの希望があります。
- 気持ちを否定せずに聞いてほしい
- 二人の触れ合いについて話す時間がほしい
- 性行為以外の触れ合いを増やしたい
- 誘い方や断り方を二人で決めたい
- 互いの体調や生活の負担を確認したい
- 第三者に相談する選択肢を考えたい
希望を一つにすると、相手へ結論を迫るのではなく、相談として伝えやすくなります。ただし、希望を具体的に伝えても、相手が同じ希望を持つとは限りません。
「望まないこと」も同じように大切にする
自分が求める側でも、求められる側でも、したくないことを整理できます。
- 断った理由をその場で詳しく説明するよう迫られること
- 不機嫌、無視、脅しで応じるよう求められること
- お酒に酔っているときや眠っているときに進められること
- 避妊や身体の不安を無視されること
- 話し合いを性行為の直前や直後だけに行うこと
- 夫婦だから当然だと決めつけられること
夫婦であっても、性的な行為への同意はその都度必要です。一度応じたこと、以前は望んでいたこと、結婚していることが、今の同意の代わりにはなりません。誘うことと、応じるよう圧力をかけることも別です。
内閣府は安心できる関係について、意見が違っても互いに伝え合えること、嫌なことへ「NO」と言えること、相手が嫌がることをしないことを挙げています。この案内はデートDVの文脈で作られたものですが、互いの意思と境界を尊重する視点として確認できます。
話す前に決めておくこと
目的
「今夜解決する」ではなく、「互いがどう感じているかを知る」のように小さくします。
時間と場所
誘った直後、断られた直後、疲れ切った深夜は避けます。どちらも途中で休める時間を選びます。
最初の言葉
「責めたいのではなく、最近の寂しさを一緒に整理したい。今週、20分だけ話せる?」のように、目的と長さを伝えます。
「あなたはいつも避ける」ではなく、「私は触れ合いについて話せない状態が続くと寂しい」と、自分の経験から始めます。
中断の条件
声が大きくなる、否定が続く、どちらかが怖くなる場合は中断します。「今日はここまでにして、明日の昼に続ける」など、戻るかどうかも含めて決めます。
相手の答えを診断しない
相手が話したくない、疲れている、触れ合いへの希望が違うと答えても、短いやり取りから病気、愛情の有無、浮気などを決めつけません。一方で、自分のつらさを「仕方ない」と消す必要もありません。
身体やこころの不調が気になる場合は、本人が希望する範囲で医療機関などへ相談する選択肢があります。本記事は原因の診断や治療方法を示すものではありません。受診を相手への要求や、性行為へ応じてもらう条件にしないことも大切です。
二人だけで同じ話を繰り返す場合は、自治体の相談、個人または夫婦のカウンセリングなど第三者を利用する方法があります。相談先の対象、資格、費用、守秘、同席条件を公式案内で確認します。
相談先の役割と選び方は、夫婦の悩みに合う相談先の選び方で整理しています。
怖さや強要がある場合は話し合いを優先しない
断ると怒鳴られる、無視や生活費の制限がある、嫌がっている性的な行為を強いられる、避妊に協力してもらえない、端末や行動を監視される。こうした状況は、単なる希望の違いとして扱いません。
相手と二人で話すことが危険につながる場合は、安全な場所や連絡方法を確保し、公的な相談窓口や信頼できる人へつながります。内閣府のDV相談ナビは「#8008」から最寄りの配偶者暴力相談支援センターへつながり、DV相談+では電話やチャット等が案内されています。緊急の危険があるときは110番を利用してください。
どちらが被害者・加害者かを、この記事だけで決める必要はありません。怖くて断れない、身体の安全が脅かされているという感覚があるなら、まず外部へ相談できます。
今夜は三つだけ書く
- 何がいちばんつらいのか
- 相手に一つだけ伝えたい希望は何か
- 自分が望まないこと、安全のために守りたい境界は何か
答えがまとまらなければ、今夜は結論を出さなくて構いません。性行為の回数や期間で、自分や相手の価値を決める必要もありません。
つらさを無視せず、相手の意思も決めつけず、同意と安全を土台に小さく話す準備をする。二人だけで難しいときは、目的に合う第三者へ相談する。その順番で考えてください。
参考・確認した情報
- 内閣府男女共同参画局「安心できる関係づくり」
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/date_dv/relief.html - 厚生労働省「困った時の相談方法・窓口」
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/ - 内閣府男女共同参画局「DV相談について」
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/ - 内閣府男女共同参画局「暴力の形態」
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html
確認日:2026年8月24日
